なぜ優先株の利回りは
6%も出るのか?
「債券と株式の中間=安定インカム」と言われる米国優先株。でも利回り約6%はタダで手に入るものではありません。その正体=4つの性質を、初めての人にも分かるように解説します。
① 弁済順位 — 社債の「後」・普通株の「先」
会社が倒産した時の弁済順位は『社債 > 優先株 > 普通株』。優先株は普通株より先に守られるが、社債よりは後回し。この「中間」の立ち位置ゆえ、利回りは社債より高く(リスクの対価)、普通株より値上がり益が小さい。『優先』の名前だけで安全と誤解しないこと。
② 金利感応度(デュレーション) — 金利が上がると価格が下がる
優先株は満期の無い(または超長期の)固定利回り証券に近く、デュレーション(金利感応度)が長い。長期金利が+1%動くと、価格はデュレーション×1%ぶん下落する。2022年の急激な利上げ局面では、多くの優先株ETFが年間で二桁の下落を経験した。『利回り6%』は金利が動かない前提の話で、金利上昇では元本が削られる。
③ 金融セクター偏重 — 中身は「銀行・保険」だらけ
優先株の主な発行体は金融機関(銀行・保険)。自己資本規制上、優先株での資本調達が多いためで、優先株ETFは構造的に金融比率が6割超になる。分散しているつもりでも、実は金融セクター1本足に近い。2008年リーマンショックのような金融危機では、優先株全体が直撃を受ける(この一点集中リスクを理解しておく)。
④ 値上がり益はほぼ無い — インカム専用の道具
優先株の多くは『額面(par)』での償還が基本で、株価が数倍になることはまず無い。普通株のような値上がり益を期待する資産ではなく、『毎月の分配(インカム)を受け取り続ける』ための道具。だから比較の軸は「値上がり益込みの総リターン」ではなく、「税・為替を引いた後、毎月いくら手取りで入るか」になる。
PFF / PGX / PFFD の性格の違い
米国優先株ETFの代名詞。純資産$14Bと群を抜いて大きく、最も流動性が高い=売買スプレッドが狭く安心して持てる。利回り約6.4%・毎月分配で『安定インカム』の王道。構成は銀行・保険など金融機関の優先株が約6割を占める。経費率0.46%はPFFDよりやや高めだが、規模と実績で選ばれ続ける業界標準。まず優先株ETFに1本、ならPFF。
⚠️ AUM $14B と優先株ETFで最大=売買しやすい。金融偏重(約62%)で、2020年コロナショックや2022年の金利急騰時には価格が10〜20%下落した実績。
Invesco が運用する投資適格・固定利回り中心の優先株ETF。純資産$5Bと中堅。固定利回り銘柄が多いためデュレーション(金利感応度)が3本で最も長く、金利上昇局面では最も値下がりしやすい半面、金利低下局面では最も値上がり益が乗りやすい。経費率0.50%は3本で最高。『金利が下がる』と読むならPGX、という金利ベット色が最も強い1本。
⚠️ 固定利回りの優先株中心でデュレーションが長め(約6.6年)=3本の中で最も金利上昇に弱い。経費率0.50%は3本で最も高い。金融比率も約66%と高い。
Global X の後発・低コスト優先株ETF。経費率0.23%はPFF(0.46%)/PGX(0.50%)の半分以下で、長期保有ほどこのコスト差が複利で効く。利回りも約6.5%と最も高い。分散を効かせた設計で金融偏重もやや緩め(約60%)。弱点は設定が2017年と新しく、リーマンショック級の金融危機で優先株がどう振る舞うかの実データが無いこと。コスト重視ならPFFD。
⚠️ 経費率0.23%と3本で最安=長期保有ほどコスト差が効く。ただし設定2017年で運用実績がPFF/PGXより短く、リーマンショック級の暴落局面を経験していない。